飛び石によって生じるフロントガラスの軽微な傷…。一見大したことがなさそうに見えますが、放置したままでいると大きなリスクを招きます。本記事では飛び石による傷の危険性や応急処置の方法、車両保険の適用条件などについて解説します。

フロントガラスの飛び石による小さな傷は放置すると危険

走行中に「パチッ」という音とともに飛び石が当たり、フロントガラスに小さな傷ができてしまった。そんな経験をしたことはありませんか？ 小さなチッピングなら大したことがないように思えますが、そのまま放置すると思わぬリスクを招くおそれがあります。

小さな傷が大きなヒビに広がる可能性

フロントガラスに入った微細な傷は、走行中の振動によって徐々に広がっていきます。視界を妨げるほど傷が大きくなると、安全運転に支障をきたすだけではなく、リペア（補修）不可能な亀裂にまで進行する可能性があります。

また、急激な寒暖差も要注意です。寒い時期に温水で洗車したり、ガラスヒーターを使ったりすると、ヒビが広がりやすくなります。

車検に通らなくなることも

車検の保安基準では、ドライバーの視界が確保されて、フロントガラスが強度を保っていることが求められます。そのため、フロントガラスのヒビや傷が視界を妨げる大きさにまで進行すると、車検に通らなくなる恐れがあります。

放置すると修理費用が高額に

初期段階であればリペアで済むケースが多いものの、傷が伸びてガラス全体に広がると交換が必要になります。フロントガラスの交換は費用が高額になることも多いため、早めの対応が結果的にコストを抑えることにつながります。

飛び石による傷を見つけたときの応急処置

飛び石が当たってフロントガラスに傷がついたら、できるだけ早く応急処置を行うことが大切です。放置すると、リペア時の仕上がりが悪くなったり、ヒビが広がったりするリスクが高まります。業者に修理を依頼するまでの間に、次のような対処をしておきましょう。

傷口の汚れや水分の侵入を防ぐ

傷にゴミや水分が入ると、修理時の仕上がりにムラが出ることがあります。ヒビの入った部分を水やカーシャンプー（中性洗剤）で優しく洗い、汚れや油分を取り除きましょう。その後は、必ず完全に乾燥させることがポイントです。濡れたままにしておくと、内部に水分が残って劣化の原因になります。

保護シールやビニールテープで傷を保護する

乾燥させたあとは、市販の保護シールやセロファンテープなどで傷口を覆います。その際は力を加えず、優しく貼り付けるのがポイントです。

シールやテープは一枚で傷全体をカバーできるサイズを選び、重ね貼りは避けましょう。重ね貼りをすると、隙間からほこりや水分が入り込むおそれがあるためです。このひと手間によって、リペアによって修復できる可能性が上がります。

フロントガラスの小さい傷を補修する方法

フロントガラスにできた小さな傷は、補修することができます。補修の方法は「DIY」と「プロへの依頼」の2つがあります。それぞれの特徴を理解して、状況に合った方法を選びましょう。

DIYで補修する

ごく小さな傷であれば、市販のリペアキットを使って自分で補修することも可能です。以下に大まかな修理工程を記します。

1. カーシャンプーを使い、ガラス表面の汚れを除去する
2. ピンセットなどを使い、傷の内部のゴミやガラス片を丁寧に取り除く
3. 乾いたクロスで水分を拭き取る
4. 修理キットに入っている、液だれ防止用の台座を傷の中心に貼り付ける
5. 台座の穴に注射器をセットし、UVレジンを数滴注入する
6. 注射器をゆっくりと押し引きして、レジンを傷の隅々まで浸透させる
7. レジンを傷全体に浸透させたら、注射器と台座を取り外す
8. 補修箇所に少量のレジンを垂らし、付属の透明フィルムを貼り付ける
9. UVライトを照射して、レジンを完全に硬化させる
10. 硬化後、ガラス表面の余分なレジンを付属のカミソリ（またはカッター）で削り取る

プロの業者に修理を依頼する

ガラスの傷を補修する機会は多くないため、作業に慣れていない人も少なくありません。自分で補修することに不安がある人は、専門の技術と設備を持つプロに修理を依頼することをおすすめします。

自分で補修する場合の費用と注意点

DIYで補修する場合、市販のリペアキットを使うと便利です。業者に依頼するよりも安価に補修ができますが、施工には注意が必要です。

DIYのメリットとデメリット

DIYの最大のメリットは、費用を抑えられることです。一方で、仕上がりや耐久性はプロの施工に比べて劣るのが実情です。補修後の透明度が低いと視界に影響し、車検で不合格となる可能性もあります。

DIYで直せるかどうかの判断も難しく、傷の内部に入り込んだゴミやガラス片を取り除くのも慣れが必要です。レジンを正確に注入できないと、美観を損なう場合も少なくありません。余計にヒビを広げてしまうこともあるので、作業に慣れていない場合は無理に行わず、専門業者に相談したほうが安心です。

DIYで補修できる傷の目安

DIY補修キットが対応できるのは、一般的に直径1.5cm前後までの“チッピング”と呼ばれる小傷です。これ以上大きい場合は樹脂が入りきらず、再亀裂のリスクがあります。

ただし、浅い傷に見えても実際は深い部分までヒビが達している場合もあるので、修理する前によく確認することが大切です。

補修費用の相場

市販のリペアキットの価格は、1,000円～2,000円程度が目安です。ただし、傷の深さや広がり方によっては、完全に補修できないケースもあります。

飛び石でできた傷の修理を依頼できる業者

フロントガラスの傷の修理は、業者によって費用や対応範囲などが異なります。修理を依頼できる主な業者は次の4つです。それぞれの特徴を理解して、自分に合った依頼先を選びましょう。

自動車ガラス修理専門店

自動車のガラス修理に特化した業者です。フロントガラスを専門に修理する業者も存在します。

板金塗装工場

板金修理だけではなく、ガラスのリペアや交換に対応している業者もあります。

カーディーラー

自動車メーカーの正規販売店で、修理サービスを受けられます。

ガソリンスタンド・カー用品店

一部の店舗では、軽微な補修に対応している場合があります。

業者に修理を依頼する場合の費用と選び方

フロントガラスの修理は、DIYよりもプロに依頼したほうが確実で安全です。プロの施工なら仕上がりが美しく、修理後の視界や強度も確保できます。

ただし、その分費用は高くなる傾向があります。ここでは4つの業者タイプの特徴と、メリット・デメリットを整理しました。

各業者に依頼した場合のメリット・デメリット

・自動車ガラス修理専門店
メリット： 費用が抑えられる場合が多く、施工時間も比較的スピーディーです。独自のノウハウがあり、イレギュラーな傷にも対応できることがあります。なかには、再修理を保証する店舗もあります。

デメリット： 店舗数が少ないため、地域によっては利用しづらい場合があります。また、安価で対応するかわりに品質が悪かったり、保証が無かったりするケースもあるので注意しましょう。

・板金塗装工場
メリット： ほかの修理とまとめて依頼でき、費用が比較的リーズナブル。柔軟な対応ができる工場も少なくありません。

デメリット： ガラス修理の専門知識が浅い場合があり、工場によって仕上がりにばらつきが出ることもあります。

・カーディーラー
メリット： 純正パーツを使用し、メーカー保証やアフターケアが充実。品質管理も徹底されており、安心感のある対応が魅力です。

デメリット： 修理費用が高めで、外部業者に委託しているディーラーの場合は受け渡しに時間がかかることもあります。

・ガソリンスタンド・カー用品店
メリット： 店舗が多い分、手軽に依頼でき、即日対応してもらえるケースも少なくありません。費用も比較的安価です。

デメリット：軽微な傷しか対応できない場合があり、仕上がりや耐久性は店舗によって差があります。

修理費用の相場と作業時間

業者のタイプによって、修理費用の相場も作業時間も異なります。次におおまかな特徴をまとめます。

・自動車ガラス修理専門店
修理費用：15,000〜20,000円　所要時間：40分〜1時間程度

・板金塗装工場
修理費用：15,000〜30,000円　所要時間：1時間程度、規模によっては半日以上かかる場合もあります。

・カーディーラー
修理費用：20,000〜30,000円　所要時間：外部業者に修理を委託している場合は数日かかる場合もあります。

・ガソリンスタンド・カー用品店
修理費用：12,000〜22,000円　所要時間：40分〜2時間程度

修理か交換かの判断基準

フロントガラスの傷は、大きさや位置によって修理で済む場合と交換が必要な場合があります。ここでは、おおまかな判断基準を紹介します。

傷の大きさで判断する

目安として、10円玉より大きい傷はガラス交換になる可能性が高いです。実際に硬貨を当てて確認してみると分かりやすいでしょう。

ガラス表面の浅い傷ならリペア可能ですが、ガラスの内部まで達している深い傷は修理が難しく、強度を確保できない場合があります。

傷の場所で判断する

傷の位置によっても修理の可否は変わります。運転席の正面や視界に入る位置、またはガラスの縁から10cm以内にある傷は、ヒビが広がりやすく修理が難しい傾向にあります。安全面を考慮して、これらの位置にある場合は交換を検討しましょう。

交換になった場合の費用と時間

ガラス交換の費用は、使用するガラスの種類によって異なります。純正ガラスであれば高額になり、代替品の社外品ガラスだと比較的安価です。

費用の目安は、軽自動車で約8万円～、普通車で約10万円～が一般的です。センサー付きやUVカット機能付きの高性能ガラスの場合は修理費用も高額で、30万円ほどかかる場合もあります。作業時間は60～90分程度ですが、接着剤の乾燥を含めると半日ほどクルマを預ける必要があります。

フロントガラスの傷修理に自動車保険は使える？

飛び石でフロントガラスが割れた場合は、車両保険で修理・交換費用をカバーできることが多いです。ここでは保険適用のポイントや注意点などをご紹介します。

飛び石による傷は車両保険が適用される

走行中に避けられない飛来物によってフロントガラスが損傷した場合、車両保険の補償対象となります。保険会社によって保険の呼称は異なりますが、ほとんどの場合で修理・交換費用の補償が受けられます。

ただし、契約内容によっては、修理費の全額が補償されない場合もあるため注意が必要です。

保険を使うと「等級」が下がる

車両保険を使用すると、翌年度の等級が1つ下がります。例えば、現在6等級であれば、翌年は5等級となり、保険料が上がる仕組みです。このため、小さな修理で保険を使うと、長期的に見ると支払い総額が高くなるケースもあります。

保険を使うべきかどうかの判断ポイント

修理費用と保険料の値上がり分を比較し、保険を使うかどうか判断しましょう。修理費用が抑えられるようなら、自己負担で済ませる方が結果的にお得な場合があります。高額になりがちなガラス交換なら、保険を使うメリットが大きくなります。

飛び石による傷の予防方法

走行中の飛び石は完全に防ぐことはできませんが、日常の工夫や予防策によってリスクを大幅に減らすことが可能です。ここでは、フロントガラスの飛び石被害を防ぐための代表的な方法を紹介します。

保護フィルムを貼る

保護フィルムを施工することで、飛び石による点状衝撃が分散され、ガラスの割れを防ぐ効果があります。透明度が高く、視界を妨げずに保護性能を発揮する製品も多くあります。

「ウインドウフィルム」のように窓ガラス専用の保護フィルムもあります。特にスマート・カーサービスで取り扱っている「ARMORTEC」がおすすめです。125ミクロンの厚みがあるほか、防傷コート層を備えており、ガラスを強固に保護します。

ただし、フィルム施工費用よりもガラス交換費用の方が安く済むケースもあるので、事前に施工業者に相談しておくとよいでしょう。

車間距離を十分に保つ

飛び石の多くは、前方の車両のタイヤが巻き上げた小石が原因です。特にトラックや大型車の後方は危険度が高いため、十分な車間距離を保ちましょう。

車間を開けることで、石が跳ね返っても衝突するリスクを大幅に減らせます。

日常の予防対策で、愛車のフロントガラスを守る

飛び石によるフロントガラスの傷は、放置するとヒビ割れの拡大や車検不合格などのリスクにつながる恐れがあります。被害を未然に防ぐためには、車間距離をしっかり保つことや、保護フィルムを貼るといった予防策を講じるのがおすすめです。早めの対応と日常的な対策で、愛車のガラスを長く守りましょう。